-産官学のオピニオンリーダーを迎え、設立総会を開催-
これまで任意団体として約4年にわたり活動を行ってきた「日本医工ものつくりコモンズ」は、このたび更なる事業の展開と高度化を目指して、「一般社団法人 医工ものづくりコモンズ」として生まれ変わることとなりました。
そこで、この一般社団法人設立にあたりまして、「設立総会、発起人会、記念講演会」を去る5月17日(金)に慶應義塾大学三田キャンパスにて開催、当日は約150名の方にご参加をいただいて、大変盛大に新たなスタートをきることができました。
一般社団法人 日本医工ものづくりコモンズのロゴ。
医学の象徴として知られる、ギリシャ神話のアウクレピウスの杖と、工学・ものづくりの象徴である鍛冶神へパイストゥスの槌をモチーフとし、その融合をイメージしました。
任意団体「日本医工ものつくりコモンズ」は、2009年3月に、医学系・工学系12学会(当時。現在14学会)の理事会での承認を経て設立。日本初の「臨床の医師が積極的に活動する学会と、工学の基盤的な学会が融合する場」として、これまで臨床医師自らが実際の医療機器や医療ニーズについての解説を行うサロンや、内視鏡外科学会大会での「医工連携出会いの広場」などの革新的な活動を行ってきました。
しかしそうした中で、任意団体としての活動には限界があると言うことで、法人化を目指して準備を行って参りまして、今回、一般社団法人としての組織化に到達致しました。
今回の一般社団法人化をまず第一歩として、今後は活動組織の整備を図りながら、これまで行ってきた事業のさらなる展開、また医工マッチングや人材育成に向けての活動を行っていきたいと考えています。
なお、5月15日(水)に一般社団法人としての登記が完了、精密工学会の好意により、事務所の一部をコモンズ事務所とさせて頂きました。
事業年度は9月1日~翌年8月末までとし、今後は毎年秋のコンピュータ外科学会の大会中(今年は9月に東京大学にて開催)にて定例総会・事業報告等を行うことになっています。
また正会員(個人)と賛助会員(企業および個人)の募集も、ウェブサイトなどを通じてこれから随時行っていきます。
-設立宣言と、コモンズの目指す医工連携のあり方-
今回の設立総会では、まず「一般社団法人日本医工ものづくりコモンズ」理事長であり、国際医療福祉大学学長の北島政樹教授が、「コモンズ設立の宣言」として挨拶を行いました。
米国・マサチューセッツ総合病院への留学時代に医工連携を志向し、自らも進んで内視鏡手術における工学部との共同研究、手術ロボットマニピュレーターにおける触覚再現の研究、外科学会大会においてダヴィンチを使った4地区遠隔ライブデモンストレーションなどを行ってきた北島教授は、「これからの医学を考えたときに、医学だけが単独で進むのではなく、工学や産業と一緒に進んでいく必要があります。日本には医療機器の可能性を拓く新技術がたくさんあるので、これをなんとか集積していくとともに、医工連携を推進する若手の先導者教育も行っていきたい。日本は5700億円もの医療機器を輸入している状況ですが、将来的にはコモンズが多くの組織と連携して、医療機器はもちろん、日本の総合的な医療のすばらしさも世界に発信していければと考えています。ぜひ皆さんにお力添えをいただいて、日本から発信できるものをぜひ作って行きたいと思います」と述べました。
理事長 北島政樹教授によるコモンズ設立宣言
またコモンズの世話人として一般社団法人設立の経緯や概要について解説した、早稲田大学ナノ理工学研究機構・研究院教授の谷下一夫先生は、コモンズの目指す医工連携のあり方について、以下のように語りました。
「コモンズは医療現場のニーズを最重要な活動のよりどころとし、技術シーズとの融合を図っていこうと考えています。しかしシーズとニーズの2つが存在するだけで、マッチングがうまく行くわけではありません。そこでコモンズでは「入口戦略」と「出口戦略」についてしっかり考えていくことが重要であると考えています。
入口戦略では、ニーズとシーズが単に1+1=2といった融合になるのではなく、化学反応を起こして大きなシナジー効果を生むような融合を意識していかなければならなりません。また出口戦略では、技術を最終的に患者さんのところにまで届けて、確実に医療として活用できる、そしてそれが患者さんや医療現場の負担を減らし、日本経済の活性化につながるところまでを常に考えていかなければならないでしょう。
もう一つ重要な点として、これらを一過性のものではない、真に持続性のあるものとして行うためには、“医工連携=人材の育成”という点についても取り組み、今後の医工連携の担い手を育成していく必要があります。
こうした多くのミッションを担うコモンズでは、最初はやや物足りないと思われるかもしれませんが、まずは小さなところから徐々に、しかし確実に成果を出し、だんだんと大きな活動につなげていきたいと考えています。この点についてまずご理解をいただきたく思います。
また今後、活動を実りあるものとするためにはぜひ皆さんのご参加、ご協力が必要となりますが、ここでひとつご参加いただく際の考え方として「共創」という言葉を使わせていただくこととしました。つまり「コモンズに入りさえすれば、黙っていても何かいいことが享受される」わけではないのです。いろいろな分野の方が集まって、それぞれが必死に汗をかいて知恵を出しあうことではじめて、1+1=2を超えたものが生まれてくるわけです。ぜひその点もご理解いただいて、今後のコモンズの活動にお力添えをいただければと考えています」。
コモンズ設立世話人 谷下一夫教授が一般社団法人設立の経緯や概要を解説
その後、神戸大学大学院の山根隆志教授の司会により行われた記念講演会では、内閣官房 健康・医療戦略室 次長 中垣英明氏に祝辞を頂戴したのち、「イノベーション人材の育成」と題して日本医療機器産業連合会会長の中尾浩治氏に、また「ものづくりコモンズの好機」と題して、東京電機大学の土肥健純教授にそれぞれご講演をいただきました(ご講演の概要については、後日ご紹介予定です)。
内閣官房 健康・医療推進室 次長 中垣英明氏
日本医療機器産業連合会会長 中尾浩治氏
東京電機大学 土肥健純教授
更新日:2013/05/21